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BXスポールの歴史

1984年7月にBXのスポーティバージョンとして19GTが登場する。
 エンジンは159A(XU9S)型を積み、Solexのダウンドラフトキャブ(CISAC 34−34 Z1 381)を装備し1905ccから105ps/5600rpm、16.5kgm/3000rpmを得た。外観は他の前期型BXとほぼ同じだが、フォグランプを標準装備したようである。インストルメントパネルはボビンではなく通常の丸形(針式)メータ(SPORTとほぼ同じ)を備えた。また、リヤにはトレイ状のスポイラーを備えた。

1985年3月にはGTを基にSPORT(フランス語読みでスポール)がデビューした。
当時パリ・ダカールラリーでラーダニーワのPRVエンジンをチューニングしたダニエルソンにエンジンチューンを依頼してGTと同じ1905ccエンジンにSolexのツインバレルサイドドラフトキャブ(C40 ADDHE)を2連装し、高圧縮比等の改造を施した159B型と称すユニットとすることにより、126ps/5800rpm、17.2kgm/4200rpmを発生した。その結果、最高速度は195km/h、0−400mは16.4秒に至った。タイヤをワイド化(165/70R14→185/60R14、後のGTIと同サイズ)し、太くなったタイヤをクリヤするために前後にブリスターフェンダー(オーバーフェンダー)を装備、それに合わせて前後バンパーをエアダム付きの専用品とし、例の空力効果より重量でダウンフォースを稼ぐようなリヤスポイラーを初めて装備してCd値0.325を得た。

 また、蛇足ながら、85年11月にはWRCグループB参戦用にフルタイム4WDの4TCなるモデルが作られ、規定により200台は市販された。(日本にもあるという噂を耳にしていますが。)このモデルは2141ccエンジンにターボを装着して縦置きにし、ロードバージョンで200ps、20台作られたエボリューションでは380psを絞り出した。

 SPORTは当初2500台の限定販売の予定が、あまりにも人気が出たためにカタログモデルとなり翌86年には4900台、87年にも800台余りが販売されたようである。ちなみに総生産台数8200台余りである。

GTとの相違点(2002年10月追記)
 以下にシトロエン広報誌「ダブルシェブロン80号」の記事よりわかったことを記しておきます。
 GTのエンジンに対し、専用シリンダーヘッド、吸気バルブとそのタイミングの変更、特製ピストンにより、圧縮比9.5を実現。また、強化コネクティングロッドを装備。アルミ鋳造製の専用吸気マニホールドで2基の横型双胴キャブレターを装備。
 新型の軽合金ホイールに185/60X14MXWタイヤを装着。
 インテリアとしては、当時のCX GTIターボやラリーカーを模してダーク(ブラック)系統に統一。シートはサイドサポートを装備したバケット状のものにした。計器盤はGT用の通常の針式のもので、オイル量計のみだったものに油圧計をビルトインした。ギヤシフトレバーはCX GTIターボから流用、専用の3スポークステアリングホイールとした。等々です。
 また、計画当初は1600台限定であったようです。
 この当時、シトロエンのスポーツモデルとしてはCX GTIターボが最右翼だったらしく、性能比較として0-100km/h加速8.9秒(CXは10秒)、0-400m加速16.4秒(同17.1)、0-1000m加速30.5秒(同32秒)、最高速195km/h(同185km/h)とあり、シトロエン随一の高性能をアピールしています。
 さて、このうち、エンジン等についてはどの程度マイナーチェンジ後のGTIにフィードバックされたのかは不明です。
 また、この当時、ガソリンエンジンは次々とインジェクション化され、プジョー・シトロエングループもどんどんインジェクションエンジンに換装されるなか、AX SPORT等スポーツキャブレターを装備した車をエントリーさせたシトロエンはキャブエンジンの最後を飾りたかったのでしょうか。ちなみにこの当時のプジョーは既にキャブ仕様のスポーツエンジンは作ってないようです。(205のGTってないものね、みんなGTIだもん。ただし、90年の205ラリーのみ1.4にウェーバーの40ツインってのがあったっけ。)シトロエンだって、この広報誌でBX SPORTと性能比較しているのはCX GTIターボだし、AXの前モデルVISAだって最後のスポーツモデルはGTIだもの。よほどの好き者が当時のシトロエン社内にいたのでしょう。

日本にやってきたSPORT
 並行輸入車の老舗、名古屋の「オートリーゼン」社が、1985年から総計23台を輸入したものが新車で日本に輸入した全てとの情報をいただきました。販売価格はエアコン付きで358万円前後であったとの事です。ちなみに85年当時、正規輸入の16TRSの5MTパワステ付きが335万円、4ATパワステ付きが355万円であったことを考えると、破格に近い値段と思います。

1986年BXは後期型にビッグマイナーチェンジ。
 BXが後期型にマイナーチェンジした際にSPORTは消滅、実質的にはGTIにバトンタッチすることになる。
 後期型は全幅がワイドになったためにオーバーフェンダー無しで太いタイヤもクリヤできるようになり、後の16valveにおいてリヤのタイヤハウスのみ専用のオーバーフェンダー気味のパーツが奢られるのみとなっている。

一部参考資料として、株式会社ナゴヤマガジン発行月刊レフト95年2月号Vol.64を使用しております。(承諾済み)
なお、月刊レフトは東海版輸入車情報誌と銘打つ地方誌ですが、特集は非常に充実しており特に資料として使用したVol.64はシトロエン特集として29ページを割き、そのうちBX関係で17ページを使って特徴から歴史、各グレードの仕様に至るまでこと細かく記載してあってシトロエン専門誌以上の内容です。地方誌の中古車雑誌として激レアものとは思いますが、資料としては超1級品。持っている人は幸運です。尚、レフトは、現在では廃刊となってしまいました。毎年のシトロエン特集は結構いけてたのになあ。

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